山本ブログ

山本が新規事業領域でつづるブログ。オプトインキュベーション本部所属。

googleの買収動向、日米ののれん償却の違いについて

グーグルが学習型サーモスタットのNest買収を発表しました。

NESTは元AppleiPod部門担当上級副社長のTony Fadell氏が

創業した会社です。それだけを聞くと、少し意外な組み合わせにも

思えますが、Tony氏が書いた同社のブログにもあるように初期の頃

からGoogle Venturesを通じて投資をしていたんですね。

 

さて、グーグルが買収というと、去年末にもありました。

ロボット企業を相次ぎ買収した米Google、ビッグデータ活かした「スマートマシン」が視線の先に 

DARPAロボコンで勝利した日本のヴェンチャー企業が、グーグルに買収された理由

買収した会社のリストの中に、軍事ロボットの有力企業であるBoston Dymamicsに

加えて日本の東大発のヴェンチャー企業「SCHAFT」が入っていたこともあって

話題になりました。

 

今回のNEST買収、グーグルの未公開企業の買収としては過去最大です。

こちらは過去のグーグルの未公開企業の買収額TOP10

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去年はWazeがありました。その他過去にはDoubleClickやYoutube

グーグルはモトローラを125億ドルで買収していますが、モトローラ

公開企業なので、上記表には入っていません。

 

 Wikiによるとグーグルは2001年から通算で141社を買収しています。

最近の買収先リスト。

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件数的なピークは2010年で徐々に減少傾向ですが、今後IoT分野での買収に

よる影響もあるかもしれません。

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こちらの記事によるとグーグルは2013年第3四半期末時点で現金と交換株式で

565億ドルを持っています。今回のNEST買収額32億ドルも現金払いでした(汗)。

 

こちらのbloombergの記事によると今回のNESTの買収32億ドルを含めて過去

2年間の買収額で、グーグルは170億ドルを使っています。これはライバルの

アップル、マイクロソフトFacebook、アマゾン5社が同じ期間で使った買収

金額の総和よりも多いとのこと。ちなみに上記5社が買収に使った金額は合計で

130億ドル未満。

 

同記事内でアナリスト曰く今後も投資意欲は高いとのことですが、そこには危機感

も表れているようです。というのも現在グーグルの売上の84%がインターネット

広告からのもの。さんざんハードウェア、ソフトウェア、その他の領域に投資を

しながらも結局収益は広告に依存。さらには成長率が昨年は鈍化し、今年もその

傾向が続くとのこと。グーグルの手の届かない領域にいるのが上記のライバル達

であり、彼らはそこまで買収にお金を使う必要がなかった、と見ることもできます。

 

もしかして過去2年間の投資額の高さはこういった状況を反映したあせりかも

しれないです。把握できない情報が徐々に増えてきていることに対しては相当

あせっているのではないかと思います。PCのシェアが落ちてスマホタブレット

その他の端末が伸びてきていますしね。もちろんグーグルもグーグルグラスの

ような開発はしているんですけどね。

 

 

以前米のIT系企業と日本のIT系企業の時価総額を比較した記事がありました。

日本のネット企業が束になってもGoogle先生にまったく歯が立たない件について

 

日本の50社で約11.2兆円のところ、米ではグーグル1社で約30兆円、アマゾンが

14.4兆円、Facebook11.5兆円。。。

 

確かに歯が立ちませんが、グーグルのように100社以上も買収していればそれは

時価総額上がるのではないかな・・・とも思います。またその中身についての

評価も必要かなと思います。

 

しかし、アメリカの場合、買収を促進させる制度的な側面もあります。

我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提言 -のれんだい非償却化の重大なインパクト-

このレポートの内容をざっくりと言うと、

・米国ではベンチャーのイグジットの9割くらいがM&A。一方日本は逆。

ベンチャーを買収する場合将来性を見込むためのれんは大きくなる傾向。

・米の会計制度ではのれんは非償却、日本ではのれんは要償却(5年が多い)。

M&Aのイグジット先は大手上場企業であることが多く、その場合

 のれん代の償却は業績への影響が大きく、M&Aの判断を鈍らせる可能性がある。

となっています。

 

日本企業でもサントリーが米ウイスキー大手のビームを約160億ドルで買収すると

報じられましたが、これはサントリーが未公開企業だからこそできているのかも

しれません。

 

時価総額だけが勝負ではないかもしれませんが、上記レポートにもあるように

M&Aが容易になることは、ベンチャー企業の成長を促すのみならず、大企業による

社外イノベーションの取り込みを可能にし、日本経済の成長に大きく寄与する

可能性がありますので、日本側の対応にも今後注目していきたいところです。